学園長のひとり言

                                                平成12年10月28日

「ミナが結婚しました。湖の近くのルガノの教会で、家族と友達と、とても良い天気でした。」

国際結婚をしている20年来の友人から久しぶりの手紙が届いた。「一生結婚しないで自分らしく生きる!」と宣言していた彼女だったが、親の反対を押し切って結婚した。私はそんな彼女を応援し、結婚の立会人になった。

彼女の手紙が続く。「ミナも23才。私と同じ年に結婚したことになります。覚えてる?随分ん昔よね。長い道のりだったけど今になると、子供って与えるより、与えられることのほうが多いなと、つくづく思います。ミナはいつまでも私の子供ではあるけれど、今はいい意味で“親しい他人”と思っています。ミナの人生も、選ぶ道も、彼女自身のものですから。」

薄いブルーのジョーゼットのイヴニングドレスで、幸福そうに微笑んでいた25年前の若い友人の顔が目に浮かぶ。あれから色々なことがあったのだろう。自閉症の子供の先生になったミナも、マイノリティーの母親を持って随分反抗したこともあったと聞く。

帰国する度に、「早苗元気!」と元気な声で訪ねてくれた彼女。自分の選択した人生を楽しみながら母親業を卒業し、娘と一人の人間としての交流を始めようとしている。「子供に老後を見て貰いたくて子供を産んだわけじゃないけれど、年をとってくると子供というのがどんなに支えになるものか主人の両親を見ていて思います。その点、母に申し訳ないと思うのですが、ミナの結婚で改めて気がついたのだけど、親って子供には好きな道を勝手に行って欲しいと思うのよね。」

色々な子供達がいる。「息子は可愛いですから」と覚せい剤で捕まった息子について涙を流しながらリポーターに答えている有名女優のご主人。良かれと思ってすることがナカナカ子供達に伝わらない。信じていても信じれないことをする子供達。でも私は絶対信じていたいと思う。いつか子供達自身が、自分の人生の中で答えをみつけ、自分の人生の中で帳尻を合わせていくだろうから。