学園長のひとり言

平成13年1月22日

仕事でヨーロッパに行ってきました。

有名ブランド店の周りにはこの寒い中、日本人だけが相変わらず入店の順番を待つ長い列を作っており、そこには、失業やリストラ等には全く関係のない"明るい世界"が存在していた。

海外で見かける日本人を通して、日本人が随分変わったと感じる。どこが変わったかと考えると、日本円に支えられた一見優雅に見える"優雅さ"かも知れない。

現在日本で問題になっている不登校や17歳の犯罪などは、どこの国の問題なのかと信じられない程、生き生きと行動する小奇麗で華やかに着飾った日本の女性達に圧倒される。それに比例するように日本語を話す外国人の数が確実に増えていくことにも驚かされる。それも、昨年まで感じていたような"冷やかし日本語"ではなく、本当に一言一言を丁寧に使用して"仕事"で日本語を使おうと努力している"普通の外国人"に。

日本語教師の1人としては、日本語が世界中に普及することはとても嬉しい。例えそれが"円"に支えられていようとも。

上田学園の子供達には別に日本だけで生きていくのではなく、世界相手に生きていけばいいと考えている。それだからこそ、勉強の場は"机の上"だけではないと信じているし、教室の大小に関係なく、上田学園を閉鎖的な場にはしたくないと考え、色々な先生方に授業もお願いするし、色々な方々(マスコミの方から一般の大学生まで)のインタビューにも学園生が納得するかぎりお受けしているのである。

人間が"生物"であるように、人間が生きている"社会も世界も"全部"生きている"。それだけに、1日も早く、教育という"道具"を身に付け、1日も早く"自分の生方"を見つけて前進して行ってもらいたいと願う。その前進の中で、どんな人と出会い、どんな世界と出会い、悩み、考え、結論を出し、次のステップに進んでいけるかが重要だと信じている。

自分の作ったものに支えられるのは、強い。しかし、それ以外の物に支えられて出来た自信は、それが無くなったときが恐い。海外で会った日本人のような"円"に支えられているだけの日本人ではいて欲しくない。"円"を利用するのはいい。それも上手に利用できるようになって欲しい。

"利用"という言葉は一見汚く感じるかも知れない。しかし実際、物でも人でも情況でも上手に利用したり、利用されたりすることが出来る人間になってもらいたい。そして自分で、どこでも、どんな世界でも生きていける自信をつけて欲しいと願っている。こんなに素敵に悩んだり考えたりする上田学園の子供達は、絶対そうなると信じている。