学園長のひとり言

平成13年3月19日

生きること、死ぬこと

私の親友は今末期ガンと戦っている。

一昨年の12月に手術を受け、そのときから自分の病気を知っていた。そして先週再入院した彼女から「サナエ、もうリンパにまで転移したので手術も出来ないし、後は抗がん剤の治療にするか決めるだけなのよ」と昨日の電話の中で話していた。彼女は自分の病気から逃げずにしっかりと戦っている。そんな彼女に私は「自分の納得のいく方法を選択してね。絶対大丈夫だから」と、心の底から信じた言葉で答えた。

彼女とは28年前に知り合い、会う機会がなかなかない海外で生活していたときでも、心の中で「彼女が解ってくれているから、頑張らなくちゃ!」という思いが、どんなにつらいことも乗りきらせてくれた。会えば何年も会わなくても毎日会っていたように心が通じる。

人間には誰でも、長い人生の中で、大きな選択、時には命をかけた選択をせまられることがあるだろう。彼女も今、自分の命を懸けた選択をしている。

私は悩んでいる子供達に言いたい。“悩むのが嫌いだからなるべく悩まないようにしているんです”という子供達に言いたい。
生きていれば悩まずにはいられない出来事が出てくる。だから、家でじっと悩んでいるより外に出て、人と関わりあって悩んでいこう、と。

一人で悩んでいるより、人と一緒に悩んだ方がもっと最善の解決方法が見付かるかも知れないから。そして、あまり大きな問題のないときから自分にとって何が一番いいのかの選択する力が備わるようにトレーニングを積んでいこう、と。

善悪も、友人の選択も、人の甘い言葉も、自分の中にしっかりした価値基準があり、それにそった判断が出来たら自分も周りも納得のいく行動がとれるのではと思うから。そして、それがお互いを大切と思っている親、兄弟、友人、知人に対する思いやりでもあり、感謝につながるのだからと。

自分一人で生きていると思っている人にも言いたい。
一人で生きていると思っている人ほど、人の中で生かされていることに気付いて欲しい。人は絶対一人では生きていけないことを。生きているということが、人の中で生かされている証明だということを。そして、生きているということは、周りの人に喜びも楽しみも与えるが、同時に、心配も痛みも与えるということを。