学園長のひとり言

平成13年4月9日

私はとっても幸せ!

今日から春学期が始まった。

生徒達の嬉しそうな顔を眺めていると思わず「私は幸せ!」と叫びたくなる。皆素敵ないい子ばかり。どんな学園生活になるか、本当に楽しみだ。細かい授業内容は2週間位しないと決定しないが、これもどんな授業になるか面白い。

明日の先生は今頃緊張していることだろう。どんな学生と出会い、どんな授業を作っていこうか考えていることだろう。そして、全員の先生のクラスに出た生徒達。どんな感想を持つのか、来週が楽しみだ。

上田学園の授業の中に、“気功”の授業がある。先生は神崎先生。

自動車の整備士だった先生は、整備士でいた間中、職業病である“ぎっくり腰”で病院に通ったり、針灸師にかかったりしていたそうだ。そして、働きながら針灸師の学校に行き、資格を習得、サラリーマンから針灸師に転職した。それと同時に早朝の4時から9時まで、毎日雨の日も風の日も気功の訓練をし続けたそうだ。そして10年。今は針灸治療と同時に気功も治療に取り入れて、患者さんに感謝されている。

神崎先生の恩恵を今一番受け、一番感謝しているのが私の親友であろう。

彼女が末期がんと宣告されたのは3月16日。そして、入院していた病院から、ガン研で抗がん剤の治療を受けるようにすすめられた。私はそれを聞いて、何か方法を探して、彼女の思う通りの、納得いく治療を受けて欲しいと願った。同じことを考えていた彼女からも、「早苗、気功のいい先生はいない?」と聞かれた。ガン研に入院する前に、自分でもガンと前向きに戦いたいので、気功のやり方を習って入院したいと言う。私は神崎先生をご紹介した。

「西洋医学と東洋医学の一番いいところを全部試してみたら、どうですか?」と言う神崎先生の助言を受け、先生が推薦して下さった東洋医学と西洋医学を取り入れて治療をしている帯津病院や、入院していた病院ご紹介の“ガン研”等でお話を聞き、資料を集め、自分に何が一番いいか納得のいく治療法として、東洋医学と西洋医学を取り入れてやる帯津病院を選んだ。実際、ガン研で、抗がん剤が効く確率は3割。おまけに効いても、持って1年半の命と言われたそうだ。

入院までの2週間、一日おきに神崎先生から針治療と気功治療をやって頂き、1ヶ月の予定で入院をした。そして1週間ぶりに「早苗元気?」と、はちきれそうに元気な声で、彼女から私の携帯電話に連絡が入った。

「貴女が考えている以上に大変ですよ」と言われた彼女の入院だったが、神崎先生に針と気功の治療を受け、見る見る元気になっての入院だった。その上、帯津病院でも丸山ワクチンと同時に、気功や漢方等の治療も受けているとかで、[入院してふとっちゃった!」と報告してくれた。

彼女の報告に[嬉しい!、嬉しい!」と、嬉しいという言葉しか見つからず、嬉しいを連呼していた私は、「早苗、私最後まで頑張るから!」という元気な彼女の言葉に「分かった。大丈夫だから、最後まで頑張ろう!」と答えた。「神様、ありがとう!、神崎先生ありがとう!」と電話の切れた音を聞きながら、つぶやかずにいられなかった。

そして、一昨日またまた神崎先生に教えられた。

私の住宅の二階には、6年前から何十万人に一人しかかからないという病気で寝ている70歳位のおばあさんがいる。心根のやさしいその方を私の母は大好きで、その方のことをいつも心配し、心にかけている。「何十万人に一人しかかからない奇病なんですって」と言って弱音を吐くその方に母は「家の中にいるから、何十万人に一人の病気と思うだけですよ。外に出ればきっとそんな病気の方、たくさんいますよ。だから元気をだして!」と何だか良く分からない理屈で慰めている。

そんな彼女が、「天気が良いので、」と連れ出して下さった介護の方と上手く歩調がとれず、膝を痛め、痛くて一晩中寝られなかったと聞いた母は、神崎先生に連絡。「やっと“奥さん孝行”が出来ると思っていたのに、こんなになって・・・、」と嘆くご主人の側で、1時間の治療。そして、6年間手を握ることが出来なかったと言った彼女は、しっかり神崎先生の手を握り、「ワァー!ワァー!」と嬉そうな声をあげながら、指で丸めがねを作って覗いて見せてくれた。そして、寝返りもままならなかった彼女が、ご主人に手を添えてもらいながら、家族や私達の歓声の中、嬉しそうにベットから出てゆっくりソファーまで歩く様子に、誰よりも嬉しそうな顔をして見ている神崎先生に、思わず頭を下げた。

「これは奇跡でも何でもないんだよ。」と神崎先生は言う。
病気も人も相性があると言う。本人が元気になりたいと思わなければ駄目だとも言う。病気と闘ってはいけないともいう。病気も生き物だから、闘うのではなく共存すると良いと言う。特に大変な病気は、こちらが戦おうとして攻めて行くと、攻められまいとして抵抗しだす。それは人間の社会と同じだという。そして一番大切なことは、人の言葉に惑わされず、思い込まないことだという。周りは、「大丈夫だ!」と信じて心から応援してあげることだと言う。

神崎先生の話しを聞いていて、反省させられる。
先生のような立場の方は、東洋医学ばかりを勧める方が多い。しかし、先生は患者さんにとって一番いいことだと信じると、西洋医学の一番いいところも取り入れることを勧めて下さる。また、人の言葉の恐ろしさをも言う。奇病だと言われると、本人は勿論だが、本人を取り巻く周りもそう思って扱うため、自分で自分を追いつめて本当にそうなったようにしか振る舞えなくなると言う。病気は病気だけど、心がもっと病気になって本物の病気以上に病気になると言う。

人は往々にして、その人の過去の行いから「どうせ今までがそうだったから、これからも駄目よ!」と言って、今からはじまる未来を信じてあげようとしない。でも、人間の世界には理屈では説明できないことがたくさんある。だから嬉しい。だから頑張れる。

今日から春学期。自分の意志で上田学園を選んでくれた学生達の未来をしっかり信じて、真摯に学生達と付き合っていきたいと願っている。

神崎先生の授業は今週の水曜日。どんな授業をしてくださるのか、今から楽しみだ。