学園長のひとり言

平成13年4月16日

春学期1週間目、私もう一度言っちゃいます。私本当に幸せ!

「先生、この学校本当に面白いですね!」
これは春学期開講の5日目の金曜日、卒業生や新入生や先生達と麻生美代子先生(声優さん)が出演している舞台を見に行った帰りの電車の会話である。 彼は今年の新入生二人のうちの一人である。

早稲田大学の学生だった彼は、自分の将来のことを考え悩み、3年生になるこの春大学を中退。生活費も学費も自分で賄いながら上田学園に通いたいと希望して来た。親には理解しえもらえないけれど、自分の責任でこの学校に入りたいと思っていると言う。「この学校は食いついていけばいくらでも答えて下さる先生ばかりだから、貴方次第で貴方の人生にプラスになると思うけど、どちらにしても、1週間上田学園を体験して試たら!」と勧めた。その結果の答えが「この学校は本当に面白いですね、僕決めました」という、彼の感想であった。

生活費も授業料も、何回聞いてもよく分からないコンピューターのなんたら(?)という仕事で賄うという彼は、決して大男でも、筋肉隆々でもない。本当に穏やかで、ノホホンとして春風のような男の子である。でも、どうしても一人で生きていく糧を学びたいと思っていると言う。それは、大学では学べないとも言う。そんな彼を、昨年の秋学期(10月)から入学してきた野呂田君が「隣にずっと座っていて欲しいような人ですね」と称している。

もう一人の新入生は、理数科系に強い受験校として有名な埼玉の高校を1年で中退。次の年大検をとり、その後予備校に通ったりしていたと言う。普通の学校に行こうかどうか、随分迷ったようだか、彼は上田学園に来ることを選んだ。

彼は独自の世界観を持っている、なかなかユニークで魅力的な男の子だ。
そんな彼も、授業が始まった日は緊張と、どこまで自分を出してよいのか分からないようで随分混乱していたようだったが、彼の魅力やユニークさを、先生方や他の学生が1日目から認め始めていた。そして、古参(?)の学生野呂田君が、彼の知識量に「一家に一人欲しい奴ですね」と言って、感嘆し感心していた。

2週目の授業が今日からスタートだ。

まだまだ、色々なスケジュール調整がある。しかし、田村先生の英語の授業では、あまりにも今まで受けてきた英語との違いに、ビックリしながら楽しみ、日本語を外人に教える私の授業では、日本語授業を受ける英国人の2人の学生から、授業の後で毎回15分間、英語でフリーカンバセーションをしようという申し出に大喜びし、若い昆虫の先生と昆虫談義に花を咲かせ、見上先生から語学の色々な話を楽しそうに聞き、水泳の先生は先生らしくなく「格好いい!」と感嘆し、「タイ語の仕上げは、来春タイのお寺で生活しましょう!」というソーパー先生の提案に「頭は丸坊主にしないといけませんか?」と恐る恐る質問し、「自分で自分をよくしようと努力しないで、誰がしてくれるのか?、自分で自分に責任をとれる人間になるため、自分の苦手なことに向かっていかなければ駄目だ!。でも良いことばかりしていてもダメ、時々少し、悪いこともしよう!」などと言われ、目を丸くしていた神崎先生の気功のクラス。「金曜日のこの授業は、名古屋の会社の東京支社として動くことになったから、約束は絶対守る。出来ないことは出来ないと言う。責任のある行動をする。分からないことは分からないと正直に言い、質問する。動きながら学ぶこと!」等と言われ、緊張。そして、土曜日の二人の先生の授業に臨み、「本当に元気で面白くて、あんなにはっきりした物言いをする先生、好きです!」と言って最初の1週間が終わった。

今週はどんな感想が聞かれるのか?、本格的な授業はきっとゴールデン・ウイーク後だろうが、彼らの変化は1日目より2日目、2日目より3日目と、ぐんぐん変わっている。きっとリラックスできるのだろう。それが一番嬉しいことだ。

今、上田学園で問題になっていることが一つある。それは、フリースクールという名前を止めようという提案が生徒達から出ていることだ。フリースクール=フリーターになってしまうという親の思惑があると言う。自分達は上田学園に自分の人生の方向を探しに来たのだから、フリースクールではないと言う。実際に1週間体験して、本当にそう思うと言う。

確かに、フリースクールという呼び名について、卒業していった学生達からも同じように問題提示されていた。私もフリースクール=自由とは思っていない。むしろ、その逆で、上田学園を選択した以上、それに対して責任が発生していると言い続けている。責任逃れをしようとすることに対し、厳しく意見も言っている。フリースクール上田学園ではなく、何か適確な名前を捜さないといけない。皆で大きなパンをほおばりながら頭をひねったが、なかなか適確な言葉が見付からない。でも、真剣に考えている生徒達の顔を見ながら、何となく嬉しい気分。

皆が帰った教室で、仕事で来ていた田村先生の御兄様が「ここの生徒は、皆ユニークでいいですね」とポッツリつぶやいていた。それを聞いて、またまた嬉しい気分で私も言ってしまった。「こんな生徒や先生達に囲まれて私は本当に幸せ!」と。