●学園長のひとり言 |
「もっと魅力のある人になって輝いて欲しい」 上田学園の職員会議が先週の土曜日にあった。上田学園に提出された各先生方の1年間のスケジュール表を見ながら、リンク出来る授業や、こんな授業内容も盛り込んで欲しい旨の要望等が、出された。 上田学園の先生方は職業をもち、職業によっては締め切りに追われたり、締め切りはないが、自分で締め切りをつくりその間に調査したり、膨大な数の本を読破したり。1週間に何回も北海道から九州まで飛び歩く先生など、どの先生のスケジュールをうかがっても「上田学園の授業をその合間に入れて頂いて、すみません!」と頭が下げたくなる程、大忙しだ。 上田学園の授業にはきちんと時間割がある。何曜日の何時から、どの先生の授業と。先生方はどんなに忙しくてもその時間に上田学園に飛んでいらっしゃる。中には出張していても帰って来られる所だと、東京に戻って来て授業をして飛んで出張先に戻って行かれる先生もいらっしゃる。 勿論「やりましょう!」と授業を引き受けて下さった以上は、仕事をする人間としては「当たり前」と言えば当たり前だが、それに対して生徒達がまったく無関心なのだ。それに対して感謝するべきだし、誠意を持って授業を受けるのが当たり前だと思うのだが、これが中々そうはいかないのだ。まして、自分達で「上田学園に来たい」と決めて、上田学園に通うことを選択したのに、無断で休んだり、遅刻したりするのだ。 私はもともと「親だから尊敬しろ!」、 「教師だから尊敬しろ!」、 「年上だから尊敬しろ!」、 「社長だから尊敬しろ!」ということを「善し」としない人間だ。尊敬してもらいたいなら、尊敬してもらえる人間になるのが本当だろうと思うし、それを強制するべきではないと思っていた。しかし、何かを学ばせていただける自分以外の人間に対し、感謝するのは当たり前のことであり、年齢を重ねて生きている方に対し、人生の先輩として大切に思うのは当たり前のことだと思っている。完全ではない私を雇って、給料を出しながら育てくれることに対し、自分の出来る精一杯の仕事をして、感謝するのは当たり前と考えている。だから、これらのことに対して「するべきだ」という言葉は自分の中にはないのだ。何故なら「するべき」とは、強制だと思うからだ。 しかし、なのだ。上田学園の先生に対しては「〜するべきだ」と生徒達に強制したくなるほど先生達が生徒達のことを真剣に考えていて下さるのだ。そんな先生達だからこそ、本業が過密スケジュールになって「上田学園の仕事、勘弁!」と言いたいのに、「生徒に対する責任がありますので、やれるところまで頑張ってこの忙しい時期を乗り切ってみます。」と言って下さったり、「帰国するギリギリまで私が教えます。」と言って一身上の都合で、千葉の柏から岐阜に住まいを移す先生も、週に一回岐阜から教えに来て下さるというのだ。 生徒をもっと理解し、自分達が生徒達に伝えたいこと、教えたいこと、学んで欲しいことをどうやって生徒達に理解させるのか、その方法やその他の情報交換などを週1回、土曜日の午後7時の1時間位なら何とか集まれるので、「出来る限り毎週打ち合わせをやりませんか?」等と提案して下さったりするのだ。 今の子供達は小さいときから誰かに何かを、お金を出してやってもらっているし、やってもらうことに慣れている。その所為か、職業なのだからやってくれるのは"当たり前"と思っているのだろう。いくらお金を出しても、そこにはお金以上に君達の事を心配してやってくれる人がいることに、気がつかないようだ。だから「先生には先生としての責任があるように、貴方には生徒としての責任があるのよ。」と注意された生徒が「上田先生、僕知りませんでした。生徒には生徒としての責任があるということを。それを聞いたとき、"目から鱗" でした。」と本気で驚いていた。私はその言葉に考えさせられてしまった。 来週から春学期が始まる。実際の授業は4月15日からだが4月10日・11日をオリエンテーションの日にすることを決め、そのときに上田学園の方針、学校と生徒の約束事、自分達の希望すること、自分達が考えるような学校にするには、自分達が動かなければ出来ないこと。、自分達が目指す授業は、自分達の手で先生達を動かすことだ、ということもしっかり話し合うつもりだ。 最終的には先生と生徒達との話し合いで決定されるのだが、春学期の授業計画案の中の先生のコメントに、「私の授業の本音は、『拒絶の果ての無知は軽蔑以外の何物でもなく、そんなヤツの"こだわり"なんて何の魅力もない』ということです。『もっと魅力のある人になって輝いて欲しい』、これが彼らへの希望であり、自分にとっての課題であります。」と。 一見厳しいが、しかし学生達に期待をかけて下さる先生の暖かい心根を感じるこの"本音"は、上田学園の先生全体の思いだということが、職員会議をしていてひしひしと感じた。 私は上田学園のトップとしてこの言葉をしっかり受けとめて、子供達と努力していきたいと心底思った。そのために今私がしなければいけないことは何なのか、しっかり考えていこうと思った。そして、それを子供達と一緒に実践することが、今の私の課題だとも。 ピンクの世界だった井の頭公園の桜の花も散り、自己主張をしっかりする真赤なつつじの花が咲き出したここ吉祥寺。上田学園の子供達はどんな色の自分を見つけていくのだろうかと、自分達が探してきたアパートを、地方から入学してくる学生達に見せるために楽しそうに案内して行く学生達を見ながら、こんなに素敵な学生を預からせて頂いて幸せだという思いと、「頑張ってよ!中身から素敵になろうね。」というエールとで、心が一杯になった。 |