●学園長のひとり言  

平成14年10月7日
*(毎週月曜日更新)

       チョッと1枚撮りたいんです!

上田学園の秋学期が始まった。真剣に私の話を聞いているどの学生の顔も今までにないほど、素敵な顔をしている。彼らの顔を見ながら思わず「チョッと1枚写真を撮ろうか?」と言いたくなるほど、どの子供の顔も一段と"男前"になっている。そして若者らしく輝いている。「どうしたの?」と思わず聞きたくなる。また一段と素敵な人間になるために進歩しているのだろう。若いっていいことだとつくづく思う。

6つの素敵に輝いている顔だが、その輝きは各自で違う。まるでお風呂から出てきたばかりのようにサッパリとした顔。憑き物が落ちて自分のペースで動けるようになったような顔。少年の顔から青年の顔に移行しようと、時々大人の表情を覗かせる顔。大人になること、人とかかわりあいになることを否定するような様子が消え、身体全体が前進することを望んでいるような顔。「俺の興味は人類の興味」と自己中心だったのが、周りの言葉を受け入れ、聞く体制をし、聞くことを消化しだした顔。そんな彼らの共通点は、個々の中に確実にステップアップ出来るスペースが出来、外から色々なことを吸収しようと彼らなりに目を輝かせリラックスいていることだ。

今学期のテーマを考えていた。しかし、彼らの顔を見るまで不安があった。本当にこれでいいのだろうか。本当にこのやり方でいいのだろうかと。

私は学生達が生きている人間で、毎日彼らなりに前進しているのだから上田学園も、彼らに負けないくらい呼吸をし、前進していきたいし、いかなければいけないと考えている。しかし、それは彼らに100%合わせるということではない。上田学園の理想とする目標や指針はしっかりもっているし、それは上田学園の、建物や家で例えるなら「床柱」。それをぐらつかせるつもりはない。太くてしっかりした床柱を学園の中心にすえているつもりだ。しかし、その中で学ぶこと、学ぶ方法に関しては、生徒と一緒に作っていきたいと思っている。その結果、彼らが21世紀の床柱になれるように。

今学期は少し自分たちで自分のこと、授業のこと、色々なことを考えられるような時間配分にしたいと考えた。そして、もっと「人間」に興味をもってもらいたいし、自分の存在が他人にどうかかわってくるかもしっかり理解してもらいたいと考えていた。そして学生達と2日間、話し合った。今まで以上に自分たちで自分たちのスケジュールが管理できるようになって欲しいこと。一番自分の苦手なものと向かい合うことで、自分が理解出来るのではないかということなどを話しながら。そして、最後に個人面談で各自が自分が今考えている一番苦手なことに向き合うことを決めた。

今上田学園には新しい波がきている。朝8時半。バタバタと飛んできた学生が大検の勉強を始める。それを手伝う学生もパンを片手に飛んでくる。そして、何もすることのない学生が百マス計算をする。宿題をする。コンピュータを触る。それぞれがそれぞれの方法でそれぞれの考えた時間に来て、何かをし始める。その光景は既に授業が開始されているような雰囲気だ。その雰囲気の中、私は掃除をしたりお茶の準備をしたりと毎日の日課に追われる。そして1時間目担当の先生が到着する。

朝早くから誰に何も言われなくても、自分たちで決めた自分たちのことをやる彼らに「頑張ってね!」と心の中でエールを送る。あんなに嫌がっていたいくつかの科目も話し合いの結果、全員が続けると言う。自分で自分の苦手を楽しめるようにやってみると言う。自分にとって何が大切で、何が必要でないかも自分で決めていけるようになってもらいたいと考えていた私は、彼らが人の意見も取り入れながら、自分の頭で考え、色々決めていけるようになったらいいという思いで、今の彼らをサポートしようと考えている。

上田学園にいる間にいっぱい頭をぶつけたらいいと考えている。失敗し、失敗し、衝突し、衝突し、自分の心が感じる喜び、悲しみなどをサンプルに色々感じて欲しいと願っている。そして彼らの表情や行動に、もっともっと若者らしい勇気と正義感と好奇心があふれるようになって欲しいと願っている。

秋学期が始まって1週間。ほとんど外出しなかったという22歳になる新しい学生が毎日楽しそうに通ってくる。楽しそうに皆と話している。そして、新しい上田学園の波にプカプカ浮きながら「先生、殆ど引きこもりのまずい状態だったのに、毎日学校に遅れないで来て、大検の勉強もして、チョッとつかれました。でも近くに住んでいる小母さんから入学祝いをもらったんです」と嬉しそうに話してくれた。そんな彼の笑顔に「なんて素敵な笑顔をする子なのかしら。私、彼のこと大好きだわ」と思いながら、悲しい思いをたくさんしたのだから過去のことを踏み台に、100倍も200倍も人生楽しんで欲しい。その出発点に上田学園がなれたらいいし、なりたい。学生達が助けてくれるから「彼はもう大丈夫!」という思いで、「押さえて押さえて。1年目は自分のペースで学校に毎日来ることを目標にね。上田学園の生徒達、皆いい人たちでしょ。本当にいい奴たちなんだ。面白くてあきないでしょう?」と言いながら、「こんな子供達と一緒にいられて私は幸わせ!チョッと写真を撮っておこうかな。こんな素敵なハンサムさんに囲まれて、もったいないからなあ。写真を撮ったらホームページで発表しようかなあ?そんなことをしたらナル当たりが、『肖像権というのがあるンと違いますか?』などと言ってモデル料を請求しそうだなあ。やっぱり止めた方が無難かなあ?」等と考えながら、「人が苦手なんですが、上田学園に来るの嫌じゃないんですよ」とニコニコ顔で答えている彼の顔を見ながら、「え?!、どこが“人が苦手”なの?楽しそうじゃない。おしゃべりさんだし・・・」と、思わず本音の意見をぶつける私に「いや、本当に苦手だったんですよ」と言い張る彼。思わず爆笑してしまう。

素敵な笑顔で話す彼を始め、上田学園の生徒達。一生懸命やろうね。でも息切れしないようにね。そして、自分がやってもらって嬉しかったこと、自分がやられていやだったことは、絶対しない人間になろうね。人は色々な人生を背負って生きているけど、それぞれ背負っている人生を皆で大切にしながら、「一期一会」を忘れずに一日一日を大切にいこうね。自分を大切に出来る人間は人も大切に出来ると思うし、今日一日を大切に生きられる人間は、明日も、明後日も、一生も大切に出来ると思うから。まず今日の自分の足元から大切に生きようね。

引越しが決まらなくて皆に迷惑をかけているけど、狭いところで「押し合いへし合い」しながら、楽しくやりましょう!我慢して楽しんでいるうちにきっと君達を理解して、賑やかに人が集まって楽しく学んでいることを喜んでくれるような所に引越しが出来ると思うし、皆と押し合いへし合いやっていくのもいい思い出になると思うから。秋学期の一回目のイベントのサルサを踊って汗だくになってこようね。心も体も知識も美味しい季節だから、上田学園の生徒の「心肥ゆる秋」にしようね。

忙しくて「園長の独り言」が書けなくてこのホームページを訪ねて下さる皆さんに失礼なことをしているけれど、「俺がここにいて、ホンマにいい学校だと思うのに、どうして皆が入学してこないのかわからん!」と言って、「生徒の部屋」を充実させようと皆で相談してくれてありがとう。私も皆に負けないように頭をいつも柔らかくして頑張る。反省して考えて、君達にとっていい学校になるよう一生懸命努力していく。また秋学期も宜しくね!


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