●学園長のひとり言 |
平成15年4月15日* (毎週火曜日) 賑やかな上田学園の春学期 4月10日、2003年上田学園の春学期の開始。10日と11日の二日間は例年通りに、オリエンテーションの日だ。この二日間で今学期の授業内容の説明や、学校から生徒への提案と、行事に関する話し合いがなされた。 まず授業について説明し、話し合った。 「恐れ」や「競争相手」の対象としての他人ではなく、今他の人は何に興味を持ち、何を嬉しいと思い、何を悲しいと思い、どんな気持で生きているのか、そんなことに興味を持ってもらいたくて、隔週で広告代理店に勤務する方が授業をして下さること。 道具として英語が話せ、書けることは当たり前と考え、「マイ道具」として英語が使えるようになって欲しい。そのために、日本人の先生に入ってもらい、文法や英語圏の考え方、表現などに関して各生徒のレベルに合わせてサポートしてもらうこと。また、月1回くらいの割りで、英語で「株」のゲームをしながら、待ったなしで英語を使う訓練をする。このクラスを近い将来、英語でゲームをしたい一般の方達にも公開して、そこで異業種、異年齢の方達との交流を通し、どんな年齢の、どんな方々とも物怖じしないで話せるようにする。先生は、元ディーラーのイギリス人の方。 旅行の授業に関しては、行きたい国の歴史の紐解きをしっかりすることで、どうやって魅力ある旅行プランを作り、営業ツールを作り、最低二回位は実際の旅行を企画する。特に戦争で延期になっているタイ旅行は実施する。 好評で生徒が開講を待っていてくれている日本語の授業は、もう少し文法や語彙の意味を勉強しなおして、先学期以上のいい授業が出来る様に日本語(国語)の勉強をしなおす。実際に外国人に日本語を教え始めるのは5月中旬からにする。 ギリシャ語、韓国語、フランス語、イタリア語など、語源をたどりながらその文化的背景(異文化)や考え方(哲学)等も紐解き、それを通して推測する力、想像する力を養っている授業はそのまま続けていただくと同時に、自分の考えを伝える手段として力強い声で話せるように、毎回10分くらい、発生練習の代わりに、習ったドイツ語やイタリア語などで歌う訓練もいれてもらう予定。 新聞ニュース(政治・経済をはじめ芸能に至あらゆるテーマ)から問題をとりだし、ディスカッションをしていた授業は、それにプラスした期限付きの勉強もする。これに関しては、只今先生が検討中。 先生の舞台が忙しいので、実際の授業は5月からになる授業では、先生の舞台も含めて他の舞台も見ることで、話し方、表現の仕方、間の取り方を学んで欲しいこと。 色々な授業を支えるのに一番重要な基礎学習。毎朝の授業開始30分前に自習時間を設け、百マス計算や、インドのITに携わる方々を真似して20×20までの掛け算。英語と国語の音読。字を綺麗に書く練習も兼ねて漢字の練習。大検の受験を希望する学生の勉強を手助けできる者が、手分けして毎日少しずつサポートする。 単発で入っていただく授業に関しては、そのつど各先生と連絡をとり日時を決める。また学校がお願いした先生以外で、お願いしたい単発の授業がある場合は、自分たちが管理しているお金の中から、講師料、交通費、日時等を決めて交渉し、結果を学校に報告するなどを再確認。 その他、授業以外の問題として挨拶の仕方、電話の応対、お客様の応対、掃除、経費管理、スケジュール管理など日常的なことだが、大切で気になると思えることを学生達と話し合った。 上田学園はフリースクールだ。色々な理由で不登校していた学生もいれば、登校拒否をした学生もいる。それは他のフリースクールと全く同じだ。ただ、多くのフリースクールが学校に行かなくなった理由が世間にあり、学校にあり、競争社会にあると考え、一般社会から遠い所で教育をしようと考えているようだが、上田学園では毎日の生活のあらゆることが授業だと考え、学生達は隔離しないことに決めている。そのために、上田学園に見学にみえる方、遊びにみえる方、相談にみえる方、インタビューにみえる方、どんな方のご来校も生徒達と話し合って「熱烈歓迎!」でお迎えし、そこで起こる色々な問題や反応も、それが世間であり事実であり、「学ぶチャンス」と考えるようにしている。その学びの場を提供してくださる方々へのマナーは大切にしようと話し合った。 学生達は口下手だ。人が嫌いで口下手なのかと思っていたら、上田学園の学生達は決して人嫌いではない。「苦手だ!」と言いながら、あんなに楽しそうにお喋りしているのを見ると、本当は好きなのだと思う。ただ、今の学生達が一般的に持っている問題として、学生のお仕事は「勉強」で、成績以外のことの教育にフォーカスされることがなかったために、人の応対、電話の応対など、小さいときに親のやっているのを見て自然に学んでいくはずのことが、学べていないだけなのだ。 掃除も同じだ。男女同権だといいながら、男の子は勉強さえ出来ればいいと考え、掃除のやり方も教えていない。母親が料理をしているところも見せていない。お手伝いもさせない。座ったら、ごはんが出て来、欲しいと親に言う前に、親が全部察して何でも揃えてくれる。それを長い間やっていたために、当然育っているはずのその部分が育っていなかったのだ。勿論、親が子供のためになんでもしてしまうので、女の子だからと言って掃除洗濯ができるとは限らなくはなってはいるが。 私は上田学園の学生には人間として生きて欲しいと願っている。その人間として生きるためには、自分以外の人が居ないと人間としては存在できない。自分以外の人には、女性も男性も入る。その意味でも男だから、女だからではなく出来ることは何でも出来る様にしておきたいと考えている。そのために、この新しい学校をリフォームするとき台所を残してもらったのだ。 男女同権だからと言って、女性が男性のように振舞う必要もなければ、男性が女性のように振舞う必要もない。まして、「日本の女性は日本の男性に虐げられている。男性の横暴を許すな!」等と声高に議論している女性を見ると、「そういう人に育てたのは誰?」と質問したくなる。 掃除をするのが好きな学生は、いない。片付けをするのも、嫌いだ。でも、私はしっかり彼らにやらせようと話し合った。将来いい人生の伴侶になるためには、どうしたらいいのかを。そのためにも掃除、洗濯、お料理等は、当たり前に出来るように、今からやり始めた方がいいと。人に喜んでもらえることを「嬉しい!」と思えるようになってもらいたいという私の願いをこめて、学校で出来ること。しっかり掃除当番をさせるつもりだ。 新学期の授業が今日から始まった。バタバタと9時半にやってきた彼らは、紙の上を走る鉛筆の音だけをバックグランドミュージックにして、一斉に百マス計算などの基礎学習を開始。終わると同時に1時間目の授業の準備のために、またバタバタと動きまわり、にぎやかな一日が始まった。その中に福島から入学してきた15歳の学生と、千葉から入学してきた25歳の学生が、まるでずっと前から上田学園の学生のように、楽しそうに授業を受けている。 「息子が先生に送ってくれと置いていきました。大学へ行く資金を貯めてくるとタイから帰国して2週間だけ家にいて、愛知県の車の組み立て工場に就職して行きました」と、昨年の10月に卒業した学生のお母様のお手紙と一緒に、彼がタイ語の勉強の合間に和訳したという英語の物語が綺麗に清書されて送られてきた。そしてタイから丁度戻っていらしたソーパ先生からも、タイで日本語を教えている卒業生が、本当に頑張ってよくやっているという報告を受け、大忙しに新学期の準備をしていた私は、彼らに負けないように頑張らなくちゃという思いと、後に続く在校生たちのことを思い、何とも嬉しい気持と、お国訛りが飛び交う賑やかなが学生達の話し声と笑い声に、思わず聞き耳を立ててしまい、こみ上げてくる笑いを一生懸命押し殺しながら、このホームページを終わらそうと孤軍奮闘しているところだ。
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