●学園長のひとり言

平成16年8月20日*

(毎週火曜日)

“夏のソナタのハンサムボーイズ”

お盆休みも終わり、仕事に戻った方、夏休みを続けている方、色々だか今年の夏の暑さには、皆がウンザリしている。そのウンザリした暑さの中で「冬のソナタ」のヨン様も襲名興行で頑張って世の中の方々を魅了している市川海老蔵も真っ青になるだろうと思うほど上田学園の学生達の顔がきりっとして格好いいのだ。

「どこが?」と言われると、・・・・説明できないが、「どこかが変わったのだろう・・・?」勿論、急にヨン様のように背が180センチになったのでもないし、この猛暑の中ヨン様スタイルのマフラーをして、憂いを含んだ顔をして熱したフライパンのような東京を歩いているわけでもない。ましてや、海老蔵張りの大きい目玉で見栄を切っているのでもない。でもなのだ、一ヶ月前に成チェリンが「髪の毛をのばしたいんだ」と言うのを聞いて思わず「ナルチェリンは短いのが似合うと思うけどな…、どうしてもというなら絶対ヨン様のカツラを買ってかぶって!」とお願いしたことが嘘のように、どの学生もどの学生もキリットしたハンサムになっているのだ。

ここ2・3日顔を合わせる度に、彼らと話す度に「どこかが違う」と思いながら話していた。もし思い当たることがあるとすれば、彼らは規則正しい生活をし、責任を持たされているからかもしれない。

上田学園を設立した当初から私は、上田学園の学生達の教育は先生ばかりにお願いせず、世の中からも教育して頂こうと考えていた。そのために、どんな方の来訪をも大歓迎し、その時その時在籍している学生達の顔ぶれを見て、あるときはインタビューに来て下さったレポーターの方達、見学に来て下さった大学教授や学生さんたちなど、授業を通して知り合った方々から色々注意を受けたり教えて頂いたり、知識で頭でっかちになっていると思われる学生には、体を使う仕事をみつけて、最低一ヶ月働くことを夏休みの宿題にし、ネットで仕事を探した学生達は、土方や、引越し屋や、便利屋のようなところで「昨日は親方にモタモタしていると叱られた」等と報告しながら、アルバイトをした。

時期が来たら将来のことも考えて、年齢には関係なく全ての学生達に休みを利用して仕事をさせたいと以前からずっと考えていた。仕事を通して色々な企業の方々と知り合いになり、色々な話が聞け、仕事を通して叱られ、注意され、企業の裏も見せてもらい、何かを感じてくれたらいいと願っていた。

そして今年の夏、上田学園も前から考えていた“研修”を実践するために8月9日から8月19日まで、学生達は第一回の企業研修として仕事を始めた。

研修なのでお金は要らないと考えていたが、お金も出して下さり、今回の仕事がきちんと終えられれば、休みの度に色々なイベントなどのお手伝いも兼ねて研修が出来ることになった。

今回はホテルとテレビ局主催のイベントだ。1日目は舞台を設置したり、色々なコーナーを設置したりで大変だったと聞く。研修をさせて頂けるだけでも感謝なのに、お金まで頂戴するのだ。大変なのは当たり前。その所為か、始めの2・3日は学生達はぐったりして研修終了後、直行で帰宅していたようで学校にとめてあるバイクで帰る荻ちゃんから話が聞けたぐらいで、各自どんな状況で仕事をしているか、顔を見るまで心配した。

が、そんな危惧は“余計なお世話”と言われそうなほど、明るい笑顔で学校に寄って帰るようになり、日一日と気持ちに余裕が出来たのか、何だかお風呂から出たばかりのような清潔で生き生きとしていて「昨日までは冬眠中だったの?」と勘違いしたくなるほど、目が輝きだした。

「そう、こんな生き生きとした表情で仕事が出来る社会人になってもらいたいの」と思わず言いたくなるようなキリットした「若者五人衆」。高輪から直行して帰るほうが近い藤ちゃも、きっと同じようにキリットした素敵な若者ぶりだと想像している。

学生達は“研修”と言うより、“アルバイト”と気楽に考えているようだが、それでも仕事に対する気の使い方、「今日はあまりお客様が来なかったけど、どうしてかな?」と考えたり、「俺はこんな工夫をしてみたぜ!」等と言っているのを聞くと、それなりに研修生として責任をしっかりとっていることが分かり嬉しくなった。そんな小さな積み重ねが、将来に繋がって行くのだからと、頼もしく見ている。

上田学園の学生達には実践勉強、体験勉強をたくさんやらせたいと、私は考えている。そのためにビジネスニュースはなるべく見るようにしているし、大・中・小企業に関係なく気になる経営者や考え方をする方がいると、すぐメモをしている。いつか絶対お目にかかり上田学園の学生達の研修をお願いしたいし、研修がお願い出来ないまでも、学生達に生のビジネスについて話をして頂きたいと考えているからだ。

仕事は外側から見るのと、内側から見るのとでは大きな違いがたくさんある。
外側から見て、こんな勉強が必要だろうと考えても、実際はそんな勉強の必要性が全くなかったり、必要であっても、それにもう一つ二つプラスするものを加えなければ、彼らが第一線に立つころには、それだけでは仕事をするのに十分でなくなることもあり得る。そんなことも考慮して将来に向かっての勉強をしなければならないだろう。

上田学園の先生方は全員、現在仕事をしている現役の先生ばかりであり、生の話をして下さるし、仕事をするときに必要と思われることも盛り込んで授業をして下さってはいるが、例え仕事の経験があっても分野によってはこんなことが必要なのだということがまだ理解出来ない彼らにとって、研修を通してそれを知ることだけでも、現実的な将来に繋がっていくと考えている。

10日間の研修。19日の今日で終わる。どんな顔で帰ってくるのか本当に楽しみなのだが、素敵な彼らの顔がそのまま継続していけるような夏休みになるといいと考えている。そして上田学園での毎日の積み重ねが、将来の彼らに役立つ基礎になることを願うと同時に、ヨン様ブームではないが、アメリカ、ヨーロッパ一辺倒だった日本人が、今まで考えたこともなかったアジアを再認識する時代になったように、近い将来東大、慶応、早稲田ではない上田学園のユニークでダイヤの原石のような学生達が、磨かれて、磨かれて、日本をリードしていくような時が来ることを信じて、楽しみにその日を待ち続けるつもりだ。

「上田学園の皆!各自がデザインした上田学園のロゴ入りティーシャツで、くたびれ果てて帰って来ても、どんなにおしゃれに気をつかっていたときより、毎日きちんと生活し、一生懸命責任を果たしている君達の今は本当に素敵だ。

『こんなにハンサムだったけ?』と何回も見直すほど、道を歩いている大ちゃんが輝いていて本当に目立っていたし、成チェリンは『こんなに品が良くて、優等生顔だったっけ?』と改めて思うほど顔が引き締まり、また背も高くなったように感じ、小高マンには今迄以上に『自然体になっている』と感じたし、相変わらず穏やかにニコニコしているヒロポンが自信を持って仕事の話をしているので、思わず『おめでとう!』と握手をしたくなったし、新入生の荻ちゃに至っては『大学数週間で中退して3年間仕事をしたと言ったが、本当に仕事をやっていた人間の感想だ!』と思う鋭い発言が何回も聞けて嬉しかった。

研修後、毎日直帰していた藤ちゃ。君はどんな変化をしているのだろうか。三十日の補講授業で会えるのを楽しみにしている。そして失敗したら皆でカバーするからという他の学生達の申し出に「でもまだ自信もないし・・・、迷惑かけたら悪いし・・・、それに岐阜の絵の先生の展覧会のお手伝いも頼まれているので…」と言って「十月にまた会いましょう!」とアパートをシェアーしている小高マンに手紙を残して故郷に帰って行ったタッツー。

皆の進歩は、人から見たらほんの少しの進歩かもしれない。でも、その進歩が大きな飛躍に繋がることを忘れず、努力をしていこう。私も君達に負けないよう上田学園がもっと君達から必要とされるよう、どんな努力が出来るか真剣に考え、足元の、出来ることから実践していく。そんなことをしながら皆でこの暑い夏を元気に乗り越えよう!」

 

 

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