●学園長のひとり言
 
平成16年12月30日*

(毎週1回)

心から感謝!


平成16年も後1日を残すだけになった。
学生たちと一緒に大掃除をし、ナルチェリンが学生の代表で学校の前のお宅、横のお宅、後ろのお宅など、お世話になったご近所のお宅にご挨拶に行き無事今年の授業が終了したのだが、学生たちはほぼ毎日学校に来て宿題をしたり、一月からの授業の準備のため色々なお店の方々にアポイントをとったり、インタビューに行ったりと、静かな暮とは程遠い上田学園の賑わいだ。

そんな学生たちの「行ってきます!」「只今!」「お帰りなさい!」という言葉が飛び交う中で、門松を飾り、お正月を東京で過ごす学生たちのために買い置きのお菓子を買いに行ったりしながら、ふっと母の言葉を思い出していた。

「人様が一つお辞儀するときは、3つお辞儀しなさい。2つお辞儀するときは、10お辞儀しなさい。自分の目の届かない所で、どれだけ人様のご好意で生かされているか。それを考えると何度感謝してもしたりないくらいだ」

「子供は親だけでは育てられない。知っている方。知らない方。色々な方々が色々なところで、あるときは子供に注意をして下さり、あるときは子供を誉めてくださり、あるときは子供を諭してくださり、あるときは一番嫌な役目を引き受けて叱って下さる。そんな世間があるから子供が一人前に育っていく」

「親だけの狭い技量では、子供は育てられない。まして子供が親と一緒にいる家の顔と、親と一緒にいない外の顔の両方の顔を把握することは、どんな賢い親でもできない。だから、子供を育てているときは、世の中に対し、頭を低く、常に謙虚な気持ちと、感謝の気持を持っていなければいけない。そして自分に出来ることでお返しをしなさい。子供が自分の知らないところで、どれだけ人様にご迷惑をおかけし、どれだけ人様のご好意で生かされているかを考えながら。そのために、人様が一つお辞儀するときでも、子育てをしている間は三つ多くお辞儀をしなさい」

子育ての真っ最中の兄や姉達に、いつも口癖のように諭していた母の言葉。暮の今日という日に、上田学園の一年間を振り返り、湧き上がってくる感謝の念とタダタダ頭を幾重にも下げたい気持ちで一杯な自分に、母の言葉を、兄や姉達に混じって一緒に聞いている自分がそこにいるような気持ちがしていた。


天災・人災、世界中で色々なことがあった一年だが、上田学園も本当に色々なことがあった。その色々なことがあるたびに、色々な方から助けて頂いて毎日を重ねてこられたことに、心から感謝。


このホームページを読んで下さり、上田学園を応援して下さる皆様。上田学園の学生たちを暖かい目で応援して下さるご近所の方や、学生たちにお部屋を貸して下さっている大家さんの皆様。

ご自分の時間を削って一生懸命授業に来てくださり、学生たちと本気でお付き合い下さる上田学園の先生方。そんな先生方とはまた違う目で学生たちに暖かく関わり、応援してくださっている日本語の先生方。

大切な大切なお子様達を上田学園に通わせて下さっているご父兄や御家族の皆様。そして上田学園を訪ねて下さった方々が「上田学園のこの空間は、暖かくて、言葉に出来ないくらい気持ちのいい空間ですね」と言ってホッとして下さる空間を提供して下さっている上田学園の大家さんの御家族。

今年も無事1年を過ごさせていただきました。ありがとうございました。
こんなたくさんの応援団に守られて「学生生活」を謳歌している学生たちの一人一人にも感謝。

「絶対親爺のようにはなりたくない。一緒にいたらやばいと思ったから上田学園に来た」と言っていたそんな彼が、「最近親爺から、自分がいいも悪いもたくさんの影響をうけているということを再確認して、やっぱり大切にしなければいけない存在かなと思い始めた」とホームページで書いたナルチェリン。それを読んだとき「やった!」って大声を上げてしまった。本当に嬉しかった。上田学園で学んでもらいたいことの大きな課題を一つクリアしたと思った。これからが本当のナルチェリンが出てくると信じている。今は脱皮の時だけに苦しんでいるけれど、でも「一緒に頑張ろうね!きっと後で『あの時苦しんでよかった!逃げなくてよかった!』と思えるようになるからね」

コツコツと地味なことでも絶対手抜きをせず、一生懸命やっているヒロポン。
三年目に入ったと同時に自分の考えでキチンと自分の意見を言うし、今まで底の底に沈めて隠していた自分を表に出し始めた。その証拠に書類を作っても、レポートを書いても、報告書を作成しても、「社会人」と言ってもおかしくないほどの力を発揮している。それを見るたび「ほらね、思った通りだったよね!」と嬉しくなる。「ガンバレヒロポン!『アニメオタクで〜す!』と連呼して、自己評価を低く設定しなくていいから、そのままのヒロポンでいようよね!」

「先生と間違われるジャン!」等と他の学生から言われてもニコニコ楽しそうにしている小高マン。ちょっと走りすぎて「くたびれた?」と心配したら、「全然、大丈夫です」と言っていた。これからは何に対しても自分の“許容範囲”をしっかり確認して、他人と自分との距離感覚を身に付けて欲しいと願っている。
風貌は既に貫禄充分。これから中身を充実。「お互い頑張りましょう!」

「小さい、小さい!」と思われているうちに、もう三年目に入る大ちゃん。来年は大ちゃんから大君とか呼ばれるようになるといいね。今は自分と戦わないで、人と戦っている。でも、来年は自分と戦って欲しい。そして本当の大ちゃんをみつけて、本当の自分を演じて欲しい。楽しみにしている!」

ネットゲームのお手伝いを授業代わりに一ヶ月して戻ってきた藤チャ。何かを掴んで学校に戻ってきたと思える様子に、ずっとずっと人間が大人っぽくなってきたと感じている。頼もしくなってきたとも。

大人になることは辛い。生きていくことも大変。でも今の藤チャなら「ステップバイステップ!」と、問題をクリアして自分の見つけた道を突き進んでいけるだろう。それも、楽しみを自分でつくりながら。そんな予感をさせる何かを持ち始めている藤チャ。「ガンバレ!出来る限り応援するから。上田学園を踏み台にして“ステップアップ!”」

省エネ言葉が世の中に存在することを教えてくれた荻チャ。子供を入れたいと見学にくる親御さんたち。在校生と授業内容を見て「家の子供には無理ですよね?」と言って帰ってしまう。「こんなにいい学校なのに、もっと学生が増えてもいいよね?」と話し合う学生たち。「宣伝したらどうですか」という学生たちの言葉に、「広告費は授業のためのお金にしたい」と答えたのを受けて、ふっと言ってくれた言葉「俺達や卒業生がよくなれば、それがいい広告の代わりになるんじゃないんですか?早く俺達がよくなればいいんだよ!」と。

「荻チャ、来年も頑張ろうね。そして宜しくね。また来年もヒロポンとナルチェリンの家を侵食して、彼らに大きな影響を与えながら楽しんでね。応援するから。でも台所の掃除はしてあげて下さい。ナルチェリンが悩んでいますから」

「紅一点のワタちゃん。今年は演劇の公演などで学校に来る時間が少なくて、皆と行動が取れないことも多かったけれど、来年はもっと色々なことを一緒にやろうね。ワタちゃんが入学して上田学園の“男ドモ”、なんだかいつもワタちゃんに叱咤激励され、いい方向に前進しだしている。来年はワタちゃんも彼らに叱咤激励されながら、今までと違う自分を表現して下さい。期待している!」

「未だにサマーホリデーから戻ってこないタッツー。元気ですか。皆で待っているから早く戻っておいでね。タッツーの日本語の生徒のクリスさんも、他の先生から授業を受けないでタッツーが戻って来るのを待っている。一年が明日で終わり。タッツーの一年はどうでしたか。後悔のない時間を一緒に過ごそうね。いつも皆と応援しているから」


今年も1年間ありがとうございました。皆様のお陰で学生たちと一緒に面白い一年をすごさせていただきました。

大変なことや、頭の痛いこと、色々ありましたが、それでも毎日学生たちと、お腹を抱えて大笑いをしました。そんな楽しい材料を提供してくれる学生たちに感謝すると同時に、今年の一年もたくさんの嬉しい気持ちをプレゼントしてくれた卒業生たちに感謝します。そして、「上田学園」が「学校であって、学校じゃない不思議な場所」でいられるよう来年も頑張ります。

本当に1年間ありがとうございました。
来年が皆様にとって幸多い年になりますよう、心から願っております。
来年もまた上田学園を宜しくお願い致します。

 

 

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