●学園長のひとり言

平成19年3月6日
 (毎週火曜日更新)

0%と1%の違い

 

昨年の4月から始まった平成18年度の上田学園の授業ももう少しで終わろうとしています。日経ストックリーグの結果も発表され、一年間の学びの成果がそれぞれ出てきています。その成果は、単に学校に来るか来ないかだけでも変わるということは、毎年の感想なので分かりきっていたつもりでも、毎年今頃になると改めてその事実に気付かされ、感心させられております。

ふっと卒業生であり、聴講生のヒロポンの話を思い出します。ヒロポンは「成功するかしないかの違いは10%と100%の違い」。「やるかやらないかの違いは0%と1%の違い。」と言い、一見10%と100%の違いは大きな差があるように感じられるけれど、本当に大きな差があるのは0%と1%の差だと言うのです。なぜならば、10%は、時間がかかったとしても努力さえすれば100%になる可能性はありますが、0%と1%の差は、「やり始めたか」「やり始めていないか」の差なので、無限大の差だと。無限大の差は、無限にまじわらないということなので、だからその違いは大きいのだと言うのです。

それでは0%を1%にするには、どうしたらいいと思うかと質問した私に、彼は言いました。「ほっておいたらいいんじゃないですか?自滅したいから学校に来たがらないんですから。誰でも出来ることなら好きなことだけをして、好きな時間に起き、好きなものだけを食べ、恥も、気苦労もしたくないですけど、でも、将来のことを考えて一生懸命我慢して来て、来たことがよかったという結果を、先生に助けてもらいながら自分で一生懸命努力して出しているんだから。それもどんなに今が大変でも学校に来て、やるべきことをやりながら、自分の将来に向かって進んでいける足がかりを作っているんですから。でも今寝て好きなことしかやらない人間は、親が死に、誰も面倒を見てくれなくなったら、冷たいみたいですけれど、野垂れ死にすればいいだけですからね。本人はそれを望んでいるんじゃないんですか。そうじゃなければ、将来が怖いから絶対、今がどんなに怖かったり、嫌だったり、きつかったりしてもやりますよね。やろうとしない人間を例え友達であっても助けること出来ませんから」と。そして付け加えました「何しろ、何もしない人間を食べさせる親が悪いんですよ。病気なら仕方がないけど、そうじゃない奴が多いですから。家からほっぽり出せばいいんですよ」と。

彼の言葉は重いです。彼は本当に苦労して、苦労して、彼が口にしたことを一つ一つ実践して、将来に向かって歩み始められるように1に努力、2に努力、3・4がなくて5に努力をしてきたその結果、大きなハンディーがあるにもかかわらず、世間の常識から考えても、今までの彼の行動から考えても絶対「不可能」と考えチャレンジしなかったこともチャレンジをし、世間の常識を覆して、次のステップに進める切符を手にしたのですから。

彼の話を聞いていて、本当にいつも考えさせられます。反省させられます。学生に襟を正して対応しなければいけないと、思わせてくれます。

上田学園のカレンダーには「3月17日卒業式」と書いてあります。しかし、今年は卒業式はしないつもりです。卒業式ではなく、終了式にしようと学生たちと話し合っております。色々な意味で今年上田学園を卒業していく予定の学生を安心して「卒業」とまだいえないからです。でもありがたいことに全員、上田学園に通ってくれたことで0%と1%の大きな違いである、「やる」か「やらないか」のハードルは越しています。あとは、コツコツと努力して現在が1%なら、そこから個々の学生のテンポで10%、30%、70%と各自が納得のいく結果を出す努力をしていけばいいだけのところまで来ているからです。

卒業式ならぬ終了式は3月17日ですが、実際の授業は3月24日までです。そのときには、彼らが一年がかりで調べ、分析し、撮影し、編集し、台本を作り、ナレーションをいれた井の頭公園の「ゾウのはな子」の60年間の映像と絵本がネットで見られるようになるようです。今はその最後の編集に全員が全力であたっています。

苦労して、授業の始まる前の早朝から授業の終わった後の夜遅くまで、編集を手分けしてやっている学生たちの真剣な後ろ姿に、「君たちが調べた象のはな子の日本での辛苦の60年間を知れば知るほど、『学校は嫌だ』とか、『好きなことしかやりたくない』とか、いじめられたから『死ぬ』なんて、はな子に申し訳なくて絶対言えなくなるよね。社会でどんな問題に遭遇しても象のはな子とちがい、家族や友達のいる君たちなら絶対乗り越えていかれると思えるほど、はな子の人生は壮絶な人生だったね」と、心の中で話しかけながら、象のはな子の人生から考えたら、「いくらでもチャレンジできるチャンスを持っている今の君たちの悩みは、悩みのうちにはいらない。そんなことを気付かせてくれた象のはな子のためにも「自分の手でつくることの出来る自分の人生、大切にしようね。私たち教師はいつも君たちを信じて応援しているから『がんばって!」と、応援をしながら頼もしく眺めています。

 

 

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