●学園長コラム

平成23年01月06日(木)

迎春「上田学園のさらなる未来へ」

 

明けましておめでとうございます。
2011年が、皆様にとって幸せな一年でありますよう、
心から願っております。


小さ
い時から新しい年を迎えるたびに「今年の抱負は?」とか「今年の夢は?」と質問されてきましたが、皆様の夢は何でしょうか。
私の今年の抱負は私の長年の夢を実現するために改めて第一歩を踏み出していくことです。

小学校の卒業文集に書いた私の将来の夢は、「孤児院の先生になる」でした。それは私が生まれて初めて明確に考えた“将来の夢”だったように思います。世の中には本当に不幸な人がいることを本で読み、そういった人たちを助けたいと思ったことがきっかけでした。ちなみにそれ以前の幼稚園生の頃は、兄たちと一緒に遊んだターザンごっこの経験から「おおきくなったらターザンになる!!」と言っておりました。

その後、学生運動が盛んだった大学生時代。大学を中退しブラジル航路の船で仕事をしていた友人から、ブラジルでは日本から移民した人たちが大成功して大金持ちになっていること。そんな彼らは日本人のお嫁さんをもらい、日本式の結婚式をしたがっていることなどを聞き、私の将来の夢は「ブラジルに結婚式場付のホテルをつくり、そこで大儲けをし、そのお金で長野あたりに広大な土地を買い、養老院から孤児院までをつくろう」というものになりました。
それから茶道や華道、お料理教室、バーテンダースクール、喫茶店の学校、着付け教室、マッサージの学校、タイピングの学校など等、自分勝手にホテルを経営するのに知っておいたほうがいいと思う勉強を始め、教職免許もとりましたが、大学卒業後はご縁があり、米軍の新聞社へ就職。その後イギリスへの語学留学を経て日本語教師への全くの異業種転職。思いがけず海外で日本語教師として13年近く仕事をすることになりました。

そして平成9年、日本語教師を養成するために滞在していたイギリスで、日本人の若年留学生たちの行動を目にし、またロンドン大学の教授から、日本人留学生がイギリスの大学で勉強することが何故困難なのか聞かされました。その大きな理由が、英語力以上に何を勉強したいかも分からず、自分の意見など全くないこと。自分で問題を見つけ、考え、結論を出し、他を説得することが出来ないことだと。そんなことが学べる学校が日本にないのなら、外国を知っている君が、そんな学校を作ってはどうか、という話が飛び出してきたことがきっかけで、不登校をしている子供たちの学校をつくることになりました。

こんな何もない自分でも、色々な方に助けられてここまで来られたこと。
家族は勿論、家族以上に友人、知人、日本語の学生達、日本人学校の子供たち、国内外を問わず色々な国や場所で出会った人たち。出来の悪い私という人間を色々導いてくれた彼らが、学ばせてくれたこと。それは、「人には、ほんの少し手を貸してあげ、種を蒔いてあげれば、大きな実りになる土壌がある」ということです。
頭も良く、環境も整っている中で育った今の日本の子供たちは、ほんのいくつかの種を手にすることで、世界相手にいくらでも生きていけるし、日本を引っ張っていける人材になれるはずだと、信じて作った上田学園でした。

こんな夢をずっと見続けて夢中で仕事をしているうちに、お陰様で、上田学園も現在創立14年目となりましたが、気がつくと数年前から、日々の様々な出来事に迷いが増え、だんだんその日その日の仕事に流されている状況に気がつき、「これでいいのか?」と思うようになりました。
学生達に、世の中を分析し、自分の意見を持ち、行動し、世の中を力強くサバイバルするように言いながら、自分自身が挑戦する背中を見せられていないのではないか、と。

また、政治家は?企業は?教育は?大人は?親は?子供は?・・・と、ますます疑問符しかつかない今の日本の社会。もしかしたら「日本という国がなくなってしまうのでは?」と危惧したくなるほどの日本の姿。未来に失望する若者の気持ちも理解できなくもありません。こんな今だからこそ、希望の持てる未来の日本へ向かって種をまく「教育」を一層しっかりしなければならない。

そう考え、今までの上田学園からさらに飛躍した夢=「上田学園大家族圏構想」を始めようと決意しました。それは今までの私の過去の夢の集大成とも言えるものです。

この夢「上田学園大家族圏構想」とは、従来の上田学園とレッツ日本語教育センターにプラスして新しく、大学院、さらに小学校か幼稚園、そして未定ですが動物自然関係の事業。さらにそれら学校から生まれるプロジェクト、ビジネスの推進、研究を行う機関、コミュニティとしてのシンクタンクの設立。
そしてこれらの機関を支える講師陣、卒業生達、応援団を、家族で言えば祖父母・兄弟・伯父・伯母・親戚・近所の人たちなどのような、支え合い、人間関係に温かさのあるものとしたい。

目標は、人としての優しさをベースにしながらも、自分の力で正しい政治家を選んだり、経営をしたり、そして自分の役割を楽しみながら、人のために働くことを当たり前のこととして生きていけるための教育をすること。
学生が自分の人生を終えるときに、納得して終えられるように。

上田学園は従来通り、色々な授業を通して、各先生たちの考え方、物事の見方、問題の取り出し方、解決の仕方などを学びながら、長い間好きになれなかった自分を客観的に見、不必要な垢を全部洗い流して本来の自分を取り戻し、そして自分の頭で考え、自分の足で一歩を踏み出していけるようになる場所とします。

上田学園大学院レベルでは、健全な中小企業の経営者をたくさん育てるための実践的授業を考えております。健全な経営者とは、これをすれば100%儲かるが、それを80%の儲けにし、残りの20%を、環境を保つためや、人材の育成、後世への貢献などへ使える人です。そんな経営哲学がきちんと自分の頭で考えられ、努力する背中を従業員に見せられる経営者を育てます。

レッツ日本語教育センターは、勿論外国人にとって質の高い日本語学校。しかし日本語教師にとっては、いかに楽しく日本語を勉強してもらえるかを学ぶチャレンジの場でもありますし、上田学園の学生や一般の方にとっては、外国人の学生を通して世界を認識する、異文化を認識する、日本以外の国を認識しながら、日本の立ち位置を確認し、未来の日本を自分なりに考えていくきっかけにする場所にと考えております。

幼稚園や小学校は、「なぜ?」「なに?」「どうして?」「どうやって?」と疑問を持つことを愛情いっぱいに、その年齢を思い切り謳歌させながら、自分を大切に思うから他人を思いやるという心が育つ学校であり、自分の人生に自分で責任を持てる子供に育つための基礎を育む学校です。

動物自然関係は、人も動物であり、自然の摂理にさからうのではなく、自然の摂理と共存していくことを、動物の行動を通して再確認する場としていきたいと考えております。

学園を取り巻く人・もの・環境・状況、すべてを学びの対象として取り込みながら「何からでも学ぶ素直な気持ち」で学べるような環境が即ち、「上田学園大家族圏」なのです。

「上田学園大家族圏構想」の中には、気付けば小さいときからその時々で考えた夢が入っております。
ターザンになりたかったのは、ターザンが正義の味方だからです。弱い者の味方だからです。養老院から孤児院まで併さった施設は、誰でも人の役に立てるからです。一人では駄目でも皆で出来ることをお互いに助けあえばいいのです。日本語を通して異文化も学べます。また世界に通じる一流の国際人とは、その前提としてまず日本人として一流であることであり、単なる語学の問題ではないということです。そしてシンクタンクは先人の知恵を今に、または未来に向けて応用しながら、未来の日本のためにどう教育していくか。それぞれが「知恵の種」「お金の種」「知識の種」「健康の種」「思いやりの種」等をどう蒔き、どのように育てていくかを皆で考える場ととらえています。

学びの場としての校舎は、旧い民家を移築して、囲炉裏を囲んで学生達と夜遅くまで語り合うことや、土間のかまどで美味しいご飯を炊いたり、テレビの旅行番組で見たタヒチの人たちのように、庭に大きな穴を掘って、バナナの皮に包んで豚の丸焼きを食べたりするなど、頭の中では小さいときに描いた夢を基に設計図が引かれております。

2011年、学生ともども先生をはじめ皆様に色々ご迷惑をおかけすると思います。特に今年は夢の実現への第一歩として上田学園のさらなる発展に着手します。
現役の先生方、未来の先生方、卒業生、そして上田学園を応援して下さる皆様、どうぞ今年も宜しくお願い致します。

また、上田学園を皆様の家族の一員と考えていただき、お気軽にお遊びにいらしてくださいますよう、お願い申し上げます。

 

平成23年1月吉日  
上田学園 学園長  
上田早苗



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