●学園長コラム |
平成23年11月5日(土) 心の作庭
新しい先生6名もお迎えし、秋学期が始まりました。この中には今までなかった教科が4つ入っております。その新しい教科の先生方も従来の先生と同じように、「ウヮオ!!」と思わず感嘆詞をいっぱい並べて感嘆したいと思うほど、素敵な生き方や自分の生き方をしっかり実践している方々で、三顧の礼を持って授業をお願い致しました。 それは間違っておりませんでした。今までの先生方と同じように新しい先生方も「世界中の人達にこの授業を受けさせてあげたい」と思うほど、実際に仕事をしているからでしょうか。実際に実践している方の言葉だからでしょうか。経験や体験に裏打ちされた生の言葉で、今まで考えもしなかったことを、考えさせられました。心が洗われました。そして、自分の未熟さに気付かされ「やらなきゃ!!」と思わずつぶやいてしまうほどでした。先日もそんな授業がありました。 その先生は上田学園の斜め前に住んでいらっしゃる先生で、今年の1月まで全く面識もない方でした。ただ家の前に枯れたような植木が雑然と置いてある家で、その雑然さに何とも味があり、どんな方がこれを置いているのだろうかと時々興味を持ってはおりました。それが思いがけないことでお話をするチャンスが出来、そして思わず「上田学園で先生をして頂けませんか?」とお願いしてしまいました。 先生から頂いた授業目標は「現代の文人育成」と「自分で判断きる力をつける事」の二つでした。そして第一回目の授業。先生の話を伺いながら生徒は何度も涙を拭いておりました。「一緒に授業聴かせて頂いていいですか」と思わず仕事の手を止めお願いした私と、同じように仕事で残っておりました日本語の教師、高田先生と一緒に先生のお話に聴き入ってしまいました。 作庭家である先生はおっしゃいます。植物も、生きるために努力をしていると。そのために、周りの弱い植物を覆うようにして成長していくと。だから、同じように育てても生命力のあるもの、ないもので差がつくと。 木は生きていたときの性質が切られたあとも残ると。木の性質を無視して家を建てても、短命な家が建つと。だから本当の大工さんは木の生えている山に行き、買いたい木の環境を確認し、山で直接買い付け、その性質を生かすように家を建てるのだと。 植物は人間の管理のもとになると弱くなると。だから、植物が生きるために何が必要かをよく観察して育てなければいけないと。それにはHow to 本は駄目だと。育てる環境が個々で違うから同じには育たないと。そのために、かわいそうだけれど、何鉢か枯らしても、失敗から学ぶ体験をしなければ分からないと。だから実際に行動しなさいと。 美しいものは自分で発見して見つけるものだと。そのために目を開いていって欲しいと。自分で「いいな!」と思うものを感じ取っていって欲しいと。植物だけでなく、何にでも通じてくるからと。 先生はおっしゃいます、素人でいいのだと。人に評価されようとか、売れるものを作ろうとしなくていいのだと。自分の思い通りいかなくてジタバタするが、だから面白いのだと。 生きていくことは、他にすごい迷惑をかけていると。でもそれはお互い様だからと。 歌のグループ、エクザイルのメンバーのような先生は、淡々と、でも暖かい眼差しで楽しそうにお話下さる。心が洗われる。そして思う。先生のお授業は時間割通り「心の作庭」だと。 来週の授業から「作るのは簡単、でも育てていくのが難しい」とおっしゃるミニ盆栽を育てながら楽しく実践し、体験していこうと。その中から色々学んでいこうと。 最初の授業のせいか、授業が終わりホッとすると同時に、どんなと時でも、いつも学園生を支えて下さっている石束先生、真希先生、クリス先生、伊藤先生同様、新しい方々にも先生をお願いしてよかったと、感謝で胸がいっぱいになりました。そして改めて思いました。生徒が大切で、大切で、大切だからこそ、そんな大切な生徒を導いて下さる先生方を、私はもっともっと大切にさせて頂かなければと。 久しぶりで出ました私のテーマソング「♪ガンバラなくっちゃあ〜♪♪、ガンバラなくっちゃ♪」と。 また「園長の独り言」を書かせて頂きます。今後も宜しくお願い致します。 来週は卒業生が東京に遊びに来ます。彼が「時間を下さい」と言います。新入生に自分の体験を話させて欲しいと言うのです。そんな言葉が彼の口から出るとは想像だにしませんでしたので、驚くと同時に、とても嬉しくなりました。そんな言葉が出るようになるまで彼を成長させて下さった先生方に、感謝の気持ちでいっぱいです。どんな話が聞けるのか、彼の来校を楽しみにしているところです。
上田学園 学園長 |