「祭りのあと」〜タイツアー(11月6日〜13日)を終えて

 

 

 

 

上田学園生徒企画 「第一回ふれあいタイツアー」
          プロジェクトリーダー  成瀬望

 

現在、僕と小高、知花のタイツアープロジェクト担当の3人は、お客様にアンケートや写真を送ったり、お世話になった方々へ手紙を書いたり、ツアーの締めくくりの作業をしている。同時に、反省会をして報告書をまとめたり、ホームページを作ったり、「上田学園タイツアーマニュアル」を作ったりしながら、次の第二回タイツアーへの引き継ぎ、後片づけをしている。

今回のツアーで僕らが学んだことは、膨大にある。それらを何とか次の世代へ伝えたい。そしてそれを活かして、僕らがいなくなった後にも、ぜひまた上田学園のみんなでタイツアーを企画して欲しいと思っている。なぜなら、こんな“勉強”こそ、上田学園授業の醍醐味だと思うからだ。
まず、ツアーを作って実際に販売するなんて、一般の人にはできないことだ。旅行会社に入らないとまずできないだろう。だけど旅行会社に入っても企画に携われるとは限らない。たとえ企画を担当できたとしても、まずその企画で利益を出すメドが立たないといけないし、他にもいろんな制約が付きまとうはずだ。こんな僕たちみたいに、自由にやりたい放題、好き勝手に企画できるなんて、まずありえないことだろう。しかも僕たちは企画から、手配、経理、宣伝、添乗、何もかもを最初から最後まで自分達でやり通した。ド素人の学生で、何度も失敗を繰り返しながら。こんな経験、旅行会社が新入社員にやらせてくれるはずがない。
「習ったことを実践しながら勉強する。」この上田学園スタイルの王道を行く“最高の授業”がタイツアーだったと思う。

そんな“最高の授業”タイツアーは同時に、最高に難しく、最高にプレッシャーが強い授業でもあった。
最初のツアー原案は、卒業生の野呂田さんとタッチ(立川修史)が中心になって作った。そこから、企画チームの分裂、イラク戦争などによるツアー中止を2度経験し、遂に実現させてここまで辿り着くのにかかったのが、約2年。中止したときには、すでに集まっていたお客さんの家へ謝りに行ったりもした。僕はそんなタイツアー制作の長い歴史のほとんどを、入学当初からずっと意欲的に関わり続けた。

なんて長い時間をかけたんだろうと思う。一生懸命がんばっても、なかなか辿り着けなかった。ものすごく難しくて、しんどいときはたくさんあった。真っ暗闇で手探りをする僕らは、企画を進めようと何かをするたびに、必ずどこか失敗した。失敗の連続で、企画が前に進んでいるかどうかもわからないような状態になったことも何度かあった。そんなときは、恐怖で胸が締め付けられた。自分に自信なんて1ミリもなかったし、あったのはただ、「このツアーはきっとおもしろいぞ!!」という気持ち、それだけだった。
なぜ、こんなに企画が進まないのか。なぜこんなに失敗してしまうのか。なんて何度も考えたけど、今から思うと、「失敗した!!」と思うたびに自分達は前に進めた気がする。
でも、そんな失敗に気付いて顔が青ざめたときのことなんかを思い出すと余計に、よくここまでホントに来れたなぁ。すごいなぁ。奇跡やなぁ。って心から思える。


ツアー本番中、ピサヌローク最後の学生さん達とのお別れの夜。
お客さん一人一人がマイクを持って、学生さん達に感謝の気持ちを話し、僕自身もスピーチをし、そして夕食が始まったとき、僕は急に、大きな感動が静かに胸から溢れ出てくるのを感じた。
何だか物凄い達成感。「ここまで俺たちは辿り着くことができたんだ。」という熱い思い。そして、ツアーに協力して頂いたいろいろな方への、感謝しきれない程の感謝の気持ち。
特にこのときは、現在ナレースアン大学で日本語教師をしている上田学園卒業生の金谷君に対して、自分でもビックリするほどの深い感謝の気持ちが湧いた。
金谷君は、今回のツアーを企画のときから下見まで現地でずっと助けてくれて、ツアー現場でもずっと添乗員の僕達をサポートしてくれた。ツアーに関して金谷君とメールやチャットした回数なんてとても数え切れないほどだ。
そのことを思い出したとき、急になぜか、金谷君を抱きしめて“俺たちは仲間だ。”なんて言ってしまいたいような気分になった。(実際にはしなかったんだけど。)
体が少し震え、もう少しで涙が出そうなほどの気分だった。
これが、長かったタイツアーの歴史の中での、僕の、一番の感動だった。


今回、僕の役割はツアー企画のリーダーということだったが、リーダーという立場からの感想を言うと、みんなに指示を出して作業を分担して動くというのは、なかなか難しいことだったということだ。チームで動くことによって、作業の能率が落ちてしまうようなこともたくさんあったし、分担すればこの仕事はもっと能率よく終わらせたのに。という仕事もたくさんあった。
的確な指示というのはあんまり出せなかったし、お客さんの前とかで話すのもそんなにうまくなかったし、英語も上手じゃないし、お金の計算も苦手だし、いろいろ勘違いばっかりしていた。タイツアー担当のあとの優秀な2人や、たくさんの人に助けてもらえたから、ここまでやれた。運もすごくよかったと思う。
昨日テレビ「マネーの虎」を見ていたら、ある社長が、「リーダーの条件とは、楽しい夢を見てまわりの人を楽しませることだ。」と言っていた。それで自分自身を振り返ってみたら、「そうだなー、リーダーとして今回、自分が出来たことと言ったら、それくらいしかなかったなぁー」なんて思った。

 

最後に。
タイツアーをして一番よかったと思えること。
それは、僕自身がタイを大好きになれたことだ。
僕は上田学園に入るまで、タイに関することはムエタイぐらいしか知らなかったし、まるっきり興味もなかった。
でも、こうやって仕事をすることによって、初めてタイに行くきっかけが出来、タイの人達と関わり、街・町を歩き、その大きな魅力を知ることが出来た。
こうやってツアーが終わり、タイと関わる必要がなくなってしまったのは、寂しいことだ。
今は毎日、タイポップスのCDを聴いている。
また、タイに行きたいし、また、タイの料理も食べたいし、また、日本語科の学生達とも会いたいなって思う。
今回のツアーは僕たちも楽しかったけど、でも仕事だったから、みんなを案内したり、次の予定を確認したり調整したりで、とても忙しかったので、僕自身はあんまり学生達と話したりはたくさん出来なかった。ツアー中、楽しそうなお客さん達、学生さん達を見て、何度も「ああ、羨ましいなー。俺もあの中に入りたいなぁー。」って思った。ちょっと残念な気持ちがしたけど、そんなときは、自分でもそう思えるくらいのいいツアーを俺たちは作ってるんだ。って自分への励ましにした。
次回、またタイツアーが企画されて、おもしろそうだったら、今度はお客さんとして参加してもいいなぁーって思う。そして、これは叶わない夢なんだけど、そんな、また自分が行きたくなるような素晴らしいタイツアーをもう一度、この手で企画してみたいなぁーと思う。


こんなに素敵な気持ちにさせてくれた、上田学園タイツアー企画。本当にありがとう。一生失くすことのない宝を、僕はあなたのおかげで手に入れることができました。

そして、ご協力頂いた皆様方、本当にありがとうございました!!
僕は、感謝しすぎて、どう感謝したらいいのか分からないほど、感謝の気持ちでいっぱいです。

 

平成15年11月25日

 

 

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