2008年6月19日(木)

 

黒猫のつぶやき

 

我輩は猫である。名前はまだない。毛色は黒である。人間によっては我輩を毛嫌いする者もおるが、我輩はそんなことは気にしない。

この吉祥寺界隈に住み着いて幾年か過ぎた。周りでは家が壊されたり、また新しく作られたりしているが、我輩にはあまり関係ない。いつもは平穏に暮らしている。困るのは、最近夏が以前より暑くなって、暮らしにくくなったことくらいだ。

この通りには、家々の脇に少し緑がある。特に上田学園という所は、奥の庭には草木があって、散歩をするにはちょうどいい。しかしたまに通ってみても、庭に人間の姿は見当たらない。どうやら上田学園の人間は、家の中でパソコンとかいうものをコチコチもてあそんでいるようだ。我輩は家の中にいることなど退屈としか思えない。人間のやることはわからん。

もうすぐ夏だ。最近は暑くなってきた。特に晴れの日の日差しは厳しい。たまらんので、この前の朝は日陰で涼んでいた。時刻は午前10時前、日差しも強い。すでに25℃はあるだろう。

気持ちよく寝ていると、我輩を見ている輩がいる。眼鏡をかけた太目の20代の男だ。五日市街道の方からこちらに向けて歩いてくる。どうも道路の日陰で横になっている我輩に興味を覚えたものらしい。おまけにカメラを取り出し、我輩の写真を撮ろうとしている始末だ。こっちは休んでるんだから、いい迷惑である。

と、大正通りの方から車がやってきた。猛スピードで我輩の方に向かってくる。しかし我輩は日陰で涼んでいるのだ、動かないぞ。車の持ち主は理解があったようだ。我輩を迂回して通過してくれた。それを見てあの男はますます興味津々のようだったが、1枚我輩の写真を撮ると、何か用があるらしく大正通りの方へ歩いていった。やれやれ、こっちは寝たいのに、人間はなかなか静かにさせてくれない。

それにしても、なぜ人間は自動車なんてものを使うのだろうか?我輩たちネコ科では、車に犠牲になった者がたくさんおる。それどころか人間もたくさん自動車の犠牲になっておるではないか?そんな危険なものを使う人間の気がしれない。

しかしまあ見ていると、彼ら人間は我輩たちネコよりも運動能力で劣っている。我輩たちのように塀をすいすい歩くこともできないし、全速力だったら我輩たちの方が早い。それに我輩たちネコは何も身に着けないのに対し、人間は常に何かを持って移動している。つまり人間は、我輩たちのように早く動けるように、身体を鍛えるのではなく道具を作ったということなのだな。もっとも、我輩にとってはいい迷惑なだけであるが。

やれやれ、ますます暑くなりそうだ。もう少し、この日陰で眠るとしよう。

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