この4月から、私は毎週月曜日に、ある大手企業の研究所の外国から来た研究員や学生の方に日本語を教えている。マンツーマンで、1人1時間半の授業である。教える場所は、研究所の中にあるコーヒーラウンジ。使う言葉は日本語だけ。今、私が教えているのは、研究員の方が1人と学生が2人、計3人である。大変なときもあるけれど、いい勉強・経験をさせてもらっていると思う。
その研究所があるのは、神奈川県の中部にあるA市。私はいつも吉祥寺駅から井の頭線と小田急線を乗り継ぎ、バスに乗って研究所へ行く。家を出てから研究所まで、だいたい2時間の道のりである。2時間は結構長い。けれど私はこの時間を、週1でサラリーマンの通勤疑似体験をしていると思っている。
とはいえ、日本語の授業は12時からなので、電車に乗っている時間はラッシュアワーではない。しかも小田急線で乗るのは小田原行きの急行なので、乗っているのはたいてい沿線の学校に通う大学生である。(つまり、普段の私と同じような身分)そんなに混んでもいないので、半分ほどまで来れば、大抵は座ることができる。正直なところ、通勤ラッシュよりは全然楽である。
2時間のうち、電車に乗っているのは1時間20分ほどである。最初は緊張していたので、電車の中では特に何をするということもなく、時々今日やるところを見ておくというくらいだった。しかし最近はさすがに慣れてきて、どうしようかな?と思い始めた。そこで、駅で新聞を買って電車で読むことにした。
思えば、電車で新聞なんて読んだことがない。あの大きい紙を、周りの邪魔にならないように折りたたんで読むのは結構大変である。いつも四苦八苦する。思いかけず紙を落としてしまうこともある。とはいえ、1時間もあれば、4,5ページ分の記事は読むことができる。通勤電車のサラリーマンはこうやってニュースを読んでいるんだな、と感じるしだいである。日本語の授業の話のネタに使えそうな記事が見つかることもあるし、時間つぶしに新聞はなかなか有効なようだ。
さて、研究所に到着。大手企業の研究所である。変な格好の外部の人間が入れるわけがない。いつもスーツ着用である。とはいえ、最近はさすがに暑くなってきた。汗をかくとべとついてしまって困る。帰り際に研究所の入口の貼り紙を見たら、「クールビズを推進しています」と書いてあった。今度はクールビズ疑似体験だな、と思う。
というわけで、先週は初めて、ワイシャツ(長袖)、ノーネクタイのクールビス仕様で行ってみた。電車の中ではちょっとドキドキであった。とはいえ、電車の中にチラホラいるサラリーマンの中には、クールビズの人もいるので大丈夫、とも思った。研究所のゲートでもなんてことはなく、普通に入ることができた。
そんなわけで、現在の月曜日は日本語を教える日であるが、サラリーマン疑似体験(+観察)の日にもなっている。