今日は私の友達を紹介しよう。彼の名前はオスカー。赤毛でひょろっとしたイギリス人だ。少し頼りない感じだけれど、単身オーストラリアに行ってしまう思い切りがある。私は彼と初めて会った時に、なんとも言えない親近感を抱いた。
彼と出会ったのは約二年前のある春の日だった。場所は東京にある私の部屋。彼はパソコンのスクリーンの前で微笑んでいた。中には映画『オスカーとルシンダ』のＤＶＤが入っていた。
オスカーは十九世紀半ばのイギリス南部で、牧師を父に持って生まれる。幼い頃の体験から水恐怖症になるような気弱な少年だった。敬虔なキリスト教徒である彼は、コイントスを神の啓示と考え、それに従って進路を決めていく。父の元を離れ違う宗派の牧師となったり、競馬にはまった罪の意識からオーストラリア行きを決めたりというふうに。ついにはギャンブルがばれて教会を破門され、ギャンブルが縁で知り合った女性ルシンダの元に身を寄せる。まさに破天荒な人生だ。
「僕は弱い。賭けはまるでアヘンのようだ」。教会に破門されて悲嘆にくれるオスカーは、ルシンダに向けてそう話す。弱弱しく申し訳なさそうに話す彼の瞳は吸い込まれそうなほど透き通っていて、私は思わず魅了されてしまった。もしかすると、ゲーム依存症の体験から、ギャンブル中毒になったオスカーの姿に自分を重ね合わせていたのかもしれない。この映画を見終わった時、彼は忘れられない友となった。
先週書いた文章で自分のゲーム依存症を告白してから、久しぶりに彼を思い出した。彼の瞳を想像するだけで、今でも元気が出る。オスカーは物語の登場人物でも心の支えになり得ることを教えてくれた、大切な友達である。