2008年7月17日(木)

 

父の祈りを

 

これはイギリスで実際に起こった冤罪事件を基にした映画である。

時は1974年。主人公のジェリーは、故郷の北アイルランドでコソ泥をやって町にいられなくなり、ロンドンにやってくる。しかし懲りずに仲間と自由な生活を謳歌し、盗みをやってお金を作って故郷に帰ったら、警察に捕まる。容疑は、テロの実行犯。彼がロンドンで遊んでいる間に起こったパブの爆破テロ実行犯にされてしまったのだった。彼の父やロンドンの伯母までもが逮捕されてしまう。そしてジェリーは、刑務所で父親と生活を送ることになる。父は冤罪を晴らそうとするのだが、ジェリーは自暴自棄になっているのだった。

さて、この映画を見たのは5月ごろだったと思う。まだ「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」の興奮冷めやらぬ頃で、主演のダニエル・デイ=ルイスの他の作品を見てみたくて、この作品を借りたというわけだった。

この話で焦点が置かれているのは、事件の進展や刑務所の生活はもちろんとして、事件を通してジェリーが変化していくことと、父と子の絆である。ジェリーの父、ジュゼッペは、絵に描いたような実直な男である。肺を病んで普通の仕事はできなくなり、賭け所の事務員をしている。無実の罪で収監されることになっても、正義を信じて冤罪を晴らそうとし、グレている息子をも信じるその眼差しは澄んでいて温かく、ひきつけられるものがある。警察からテロの実行犯と疑われて締め上げられ、自暴自棄になって楯突くジェリーを信じて諭そうとする。親の愛を感じさせる父親である。

自暴自棄だったジェリーが、心の変化に伴って冤罪に立ち向かっていく様は感動的である。月並みだけれども、人は変われるものなんだな、と思うことができる。冤罪という悲しい事件を扱っているが、見終わった後には、久々にすがすがしい気持ちになれた。

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